家庭学習、大変ですよね…
小学校の先生をしていると、「家で全然勉強してくれないのですけど…」と、お家の方から相談されることも多いです。
宿題をさせていると子どもとケンカになってしまう…
そもそも宿題があるかもわからない…
なんて相談を受けることがよくあります。
子どもはそもそも「学校で勉強」「家は休む」という見方をしている事が多いです。「休む場所」であるお家で集中して勉強するのはなかなか難しいものです。学校ではよく頑張るのに、おうちでは全然勉強しないなんてこともよくあります。
大人でもそうですよね。家ではなかなか集中できず、カフェで仕事…って自然としていますよね。
家で集中して勉強するのは、大人も子どももちょっとした工夫がないと難しいのです。
この記事では、家庭学習のポイントや効果について解説していきたいと思います。
家庭学習のポイント
前向きに家庭学習に取り組める子は珍しい
先ほども書いた通り、子どもが家庭で学習するのは難しいものです。そもそも、家庭学習がきちんとできる子どもは、この記事なんか読まなくても自分から進んで学習していると思います。笑
本当に家庭学習でカバーしたいのは、「あまり学習に前向きではない子ども」です。だからこそ、この記事を読んで、家庭学習に前向きでない子を前向きに学習へと向かわせたいのです。
前提として「子どもは家庭学習したくない」と思っている前提を持って工夫を考えていきましょう
・ 家庭学習に前向きな子どもはかなり少ない
習慣化させたい
幼少期から家庭学習をさせたい理由の一つに「習慣化」があります。
幼少期から「家庭でも学習する」という習慣や、「家庭で勉強するのが当たり前」という習慣を身につけると、後々非常に役立ちます。
結局「学習」は幼少期から学童期で終わるものではなく、中高生、さらに言えば大人まで続きます。小さい頃に習慣化して家庭学習を当たり前にしておく価値は大きいです。
もちろん、大人になっても習慣化は可能ですが。子どものころに身に着けた方が”ラク”ってことです。
ちなみに、「学ぶ習慣」がある大人は3割程度。一日一時間程度の「読書習慣」のある大人は1割程度です。
家庭学習の習慣化がどれだけ難しいか。大人になってからもできていない人が多い。そしてどれだけ価値があるかわかるでしょう。
・ 家庭学習を習慣化させることは大切
・「家庭学習の習慣」大人になってからも使える資産となる
では、ここからは具体的に「子どもに家庭学習させる方法」を紹介していきます。
① 報酬を使う(宿題は”学習”ではなく”作業”)
宿題は「学習」ではなく「作業」
「学習」って一体なんなんでしょう。
人によって様々なご意見ありと思いますが、一点考えておきたいのが、「宿題は学習と言えるのか?」と言うことです。
小学校の宿題は、基本的に「全員同じ内容」「全員同じ量」「一人でもできる難易度」になっているはずです。(少なくとも私はそうしています)
これは、「子どもの興味」や「個性」「得意不得意」「モチベーション」などを考慮していません。(個別に宿題を変えていたら先生が死んでしまいます笑)
これらを考えると,宿題は、よく考えて進んで取り組む「学習」ってよりも、決められたことを決められた回数こなす「作業」に近くないですか?
宿題の定番は「漢字書取り◯回」「算数ドリル◯問」「音読◯回」これら全て「作業」な気がします。
大人の仕事でも言えるかもしれません。どんなにクリエイティビティな仕事でも、やりたい仕事でも、その裏には「文書作成」「メールのやりとり」など「作業」的な内容がありますよね。
そして、大抵そういう作業ってどうしても好きになれないものですよね。
作業とわかっていれば、「モチベーションの上がらない作業をこなす」やり方を適用するまでです。
「勉強好き」=「宿題好き」の式は成り立ちません。
ですから、作業が続くような取り組みが必要です。
「作業」のモチベーションを上げるには、「報酬」が必要
では、「作業」にモチベーションを高く持って取り組むには何が必要か。それは「報酬」です。
大人も、「仕事」をすることで「お給料」という「報酬」をもらっていますよね。
時々、「ご褒美をあげて勉強させるとご褒美がないと勉強しなくなるのではないか」と言う方がいます。
それに対する答えは「程度による」です。
この後解説します。
適切な報酬の設定方法
確かに報酬は適切でないと「害」になることもあります。
「勉強したらゲーム買ってあげる」などは、ゲームの価値が高すぎるため、ゲームを買ってもらえない=勉強しないとなってしまいがちです。
では、どうすればいいのか、
ポイントは
報酬は「価値の高くないもの」にする。です。
たとえば、「はなまる」や「褒め言葉」といった報酬がオススメ。
「はなまる」や「褒め言葉」は突然もらっても嬉しくないですよね。「やったこと」があって初めて報酬として作用します。
こういったものは「ゲーム」などとちがって、物質的価値がないため「そのものが目的になっても害になりにくい」です。褒められたいから勉強する、はなまるが欲しいから勉強するってなんか可愛いですよね、笑
「無価値」までは行かなくとも「数十円」や「シール」などもほぼ価値がないと見做していいのでオススメです。
ただし、この報酬が機能するのは「低学年」までのことが多いです。
ここまでに学習習慣がつけられると高学年が非常に楽になります。
② 環境整備
整った環境なら集中が持続する
大人でも集中が一度途切れると再度集中するのは非常に難しいと言われています。
漫画やゲームなど、自分のしたいことならまだしも、そんなに気乗りしない「作業」だとなおさら難しいです。
子どもだと尚更です。ですから、集中が持続する工夫をしてあげましょう。
1番簡単なのはとにかく「余計なものが目に入らないようにする」です。
「モノには引力がある」と言われます。
漫画表紙、本の背表紙、ティッシュの箱、ゲーム
これらは全て「手にっとってもらいやすくする工夫」がたくさん盛り込まれています。
そうしないと、量販店で店頭に並んでいても、手に取ってもらえないからですね。
日本屈指のプロダクトデザイナーさんが作ったデザインに私たち人間の意志が抗えるはずもありません笑
これらがふと目に入ってしまうと、絶対に集中が途切れてしまいます。もうこうなったら自分でコントロールして目に入らないようにするしかありません。
・目に入る情報を減らす(机の向きを壁or窓へ)
・机の上を綺麗に(ほぼ何も置かない)
他にも、
・終わりを決める(どこまでやるか分からないと集中できない)
この辺り気をつけて机周りを整理してもらうと集中が持続します。
できる限り「文字」や「情報」(ロゴなど)を目に入らないようにしましょう。
これ、大人も使えるのでぜひ。
いつでも聞ける(親が側にいる)
親がそばにいる環境もいいでしょう。
ずっとくっついているというより、「何となく気配は感じる」程度の近さにいるといいと思います。
人に見られている(ような感じがする)と集中が持続します。
部屋に一人でこもっているとサボりたい放題ですからね。
小学生くらいのうちは親が近くで家事をしているくらいの環境がいいでしょう。
もしやり方が間違っている、わからないって時に質問できるのもいいポイントです。
小学生も高学年になってくると親も中々手出しするのが難しくなってきますから、できる限り低学年のうちに親に聞ける環境・関係を作っておくのをオススメします。
③ きっかけ(トリガー)を作る
大人の皆さん。やりたくない仕事・作業をするときどうしていますか?
何かきっかけがないと取り掛かり始めるまでに時間がかかること多くないですか?
子どもにとって、「宿題=やりたくない」である以上、何か工夫しないと始めることができないのです。
とにかく机に向かわせる
人間は
「やる気があるから机に向かう」
のではなく
「机に向かうとやる気が出る」
のです。
とにかく机に向かうのが先です。机に向かわない限りやる気は出ません。
なんのきっかけでもいいので机に向かうことが必要です。
オススメは
① 漫画・図鑑など好きなものを机で読ませる
② ◯時に”勉強する”でなく、◯時に”机に向かう”にする。
③ おやつを机で食べさせる
この辺りがオススメです。
とにかく机に向かえればいいのです。机に向かうと少しずつやる気が出たり、「しょうがないやるか」となるものです。
ルーティーン化する
やる気が上がらない作業をするときは「ルーティーン化」するもの有効です。
ルーティーンとは、「お決まりの動作」「決まった手順」のことです。先ほども言った通り、やる気が出たから作業が始まるわけではないのです。
人間は決まった動作をすると、少しずつスイッチが入ってくるようになっているそうです。「歯磨きをしないと気持ち悪い」みたいなのがそうです。
メジャーリーガーのイチロー選手は、打席で毎回同じ動作(屈伸とバットを立てる動作)をすることでメンタルの安定と集中力を増していたそうです。
勉強でもこれを応用しましょう。
家に帰って→おやつ食べて→勉強
みたいなやり方をとにかく続けましょう。
続けていると、おやつを食べた時点で、勉強スイッチがもう入っている状態になるわけです。
やる気が自然に出るのをを待つのではなく、ルーティーンを作って能動的にスイッチが入るように仕向けるのが大切です。
これが長く続いて「習慣化」すると帰宅後の勉強がくもなくできるようになり、中高生までの財産になることでしょう。
ルーティーン化、習慣化は1週間などでできることではないです。かなり時間はかかりますので、「今すぐできるようになって欲しい!」て人には向かないのですが、長期的に見ればとても有効なので、頭の片隅に入れておくといいかもしれません。
よくない家庭学習のさせかた
ここまでオススメの家庭学習について書いてきましたが、「やってはいけないこと」もいくつかあるのでご紹介します。
むしろこっちの方が大切かも…
① 人質をとる
「勉強しないとゲームさせない」
「勉強しないとおやつなし」
大人ってよく言いがちですよね。
こんなのを「勉強を人質」にとるやり方と言います(私が名付けて読んでいるだけです笑)
このやり方、短期的に見たら確かに勉強はしてくれます。
ゲームはしたいし、おやつは食べたいからです。
これ、勉強を、「自分の邪魔をする嫌なもの」として学習してしまうのです。こんな「嫌な勉強」自分からやれるようになるでしょうか。なりませんよね。
これ、学校でもよくみる光景なのですが、早く終わったこのために時間調節として「終わったら読書して待つ」とか「漢字練習して待つ」みたいなことって時々あるのですが、
① 読書のために適当に終わらせる人
② 時間に関係なくとにかく目の前の課題に集中できる人
の2パターンの子どもがいます。
で、どちらの子が多いかというと、圧倒的に①です。
あくまで、自分からやるように、「環境設定」を意識しましょう。
人質をとると、表面上は「自分から」やっているように見えるので要注意です。
実は自分からしているようで、大人の都合で「やらされている」構造は変わっていません。
② 数値で測る
勉強ができているかどうかを数値で測るのも避けたほうがいいです。
「数値」ってどういうことかというと、
「テストの点数」
「机に向かっている時間」
でなどで測ることです。例えば、
「テストの点数が悪かったからもっと勉強しなさい」
「◯分って決めた時間までやりなさい」
などです。
「数値」ははっきりしていて、目標設定としては正しいのかもしれません。大人も仕事上しているかもしれませんが、子どもに対してこれをするのは不適切です。
「宿題をする」という事実と結果が結びつくとは限らないからです。
要は、「宿題した=テストの点数が良くなる」とは限らないわけで、勉強したけどテストではあまり点数が取れなかったということもあり得ますよね。
大人(中高生くらいの子ども)だったら、そこから自己分析ができます。「勉強時間を増やそう」「違う勉強法を試そう」などですが、小学生にこれは難しいです。
勉強したのに、さらに勉強時間が増えるという最悪の結果になり、「テスト嫌い」「勉強嫌い」を生み出し兼ねません。
もちろん全ての子どもがそうであることはないので、よく子どもをよく観察しましょう。
【まとめ】大切なのは「報酬」「集中」「きっかけ」
まとめると、大切なのは「やりなさい」と言葉で言うことではなく、
- 「報酬」の設定
- 「集中できる仕組み作り」
- 「やり始めるトリガー(きっかけ)作り」
この3つがポイントになります。
やりなさいという言葉より、「勉強ができる環境設定」が大切です。
子どもは立場も能力も,大人より下です。大人が「無理やりやらせる」ことも可能なのです。だからこそ、大人のやり方を押し付けられ、それに合わせようとして苦しみ、傷ついてしまうものです。
あくまで、子どもが「自分からやれる環境整備」しか、大人にできることはないと心えて取り組んでいきたいものです。
「自分はこうだったから」「自分は後悔したから」といった、大人の価値観の植え付けは絶対に避けて、子供が楽しく学べる環境づくりを日々考えてあげていくのが大人の役割ではないでしょうか。
がんばりましょう!
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