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ぽけるす

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【詳細解説!】オルタナティブスクールって? 日本の学校制度についてわかりやすく!

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オルタナティブスクールって聞いたことありますか?

「オルタナティブ」は

“alternative”

意味;代替の 二者択一の

という意味です。

要するに、いわゆる”公立学校”とは違う、むしろ一般的な”学校”に対するアンチとして、特徴的な教育をしている学校といった意味合いです。一般的な学校とは違う、もう一つの選択肢としての学校が「オルタナティブスクール」です。

日本でも少しずつ増えてきているこのオルタナティブスクール。

日本の学校制度の中でどのように位置づけられているのか、詳細解説をお届けします。

日本の学校制度と”一条校”

“一条校”とは

「一条校」と言う言葉があります。これは

「学校教育法第一条に定められた学校」を略して一条校と呼んでいます。教育界隈の専門用語になります。

ちなみに

学校教育法第一条

この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。

と書いてあります。この言葉の意味するところは、

「日本で”学校”として認めるのはこれだけですよ。」として、法律上の学校の定義を決めているわけです。

私たちが一般的に考える”学校”は、私立も公立もほとんど全て、この一条校に含まれています。

一条校だと国から「認可」されると資金面などで国や地方自治体から支援が受けられます。その代わりに、「学習指導要領」や「設置義務」などによる国からの縛りがつく、という構造です。

で、「一条校じゃない学校」ってなだろうという疑問が湧くと思います。(詳しくは後述します)

例えば、

  • 自動車”学校”
  • インターナショナル”スクール”、オルタナティブ”スクール”(一部一条校も有)
  • 専門学校(美容学校、調理師学校、看護学校など)
  • 予備校、塾など

よく名前を聞く、代表的なものだけを挙げました。この辺りは”学校”と名前についていながらも、法律上は”学校”ではありません。ですから、学習指導要領による縛りも受けませんので、ある専門分野に特化した教育ができるわけです。

反対に一条校であれば、最低限日本において定められた科目(国語、算数…)などを決められた時間数、履修させなければいけません。

※一条校でも「特例」によって最低限の履修時間や科目が免除されていたりします。

ちなみにこの記事のタイトルにもある、今流行りのオルタナティブスクールのほとんどが一条校ではありません。(一部例外あり)

日本の学校制度(学校種)

学校種のまとめ

図でまとめてみました。こんな感じです。

公立学校

  • 国、地方自治体が運営する学校。
  • 中学校までは学費、教科書が無料。
  • 高校、大学でも学費免除など支援政策が豊富。学費も安い。
  • 数が多いので選択肢が豊富
  • あくまで学習指導要領に則って教育。尖った個性はない。

私立学校

  • 学校法人(会社)が運営する学校
  • 1条校の場合は規模に応じて助成金があるため、少し学費が安い
  • それでも公立と比べると学費がかかる。
  • 特色のある教育、活動が多い。(例えば宗教教育は公立ではできない!)
  • エスカレーター式(受験なし)で有名大学まで通えることも…

各種学校

  • 一条校ではないので専門教育に特化できる
  • ”学校”を卒業したことにはならない
  • 学費が高い(公的援助がないため)

オルタナティブスクール

  • 一条校ではない場合が多い(一部例外あり)
  • 一条校でない場合、私立学校よりもさらに自由なカリキュラムを展開できる。
  • ”学校”を卒業したことにならない場合も…(不登校と同じような扱い…)

フリースクール

  • 学校よりも塾や支援施設、に近い。
  • 個々に特化した支援が受けられる
  • 不登校支援、学習支援、再就学支援など多岐にわたる。

一条校以外の子どもは制度上は”不登校”

実は私たちの知らないところでこんな制度が敷かれていたんです。

確かに言われてみれば”学校”と名のつく場所はたくさんあることに気が付かれたことでしょう。

ここで問題になるのが“義務教育”という制度です。

「義務教育」とは「納税」「勤労」と並ぶ、日本国民の三大義務の一つです。

「教育は大切だ!国民全員をきちんと学校に通わせよう!」という日本国憲法発令時の考えから来ています。(ちなみに日本人の識字率が非常に高いのはレベルの高い義務教育制度の成果と言われています。どんな田舎でも都会でもある程度質の保たれた学校があると言うのは実はすごいことなんです。)

日本国憲法 第26条 第2項
すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育は、これを無償とする。

学校教育法 第22条 第39条
保護者は、子女を満6才から満12才まで小学校に、その修了後満15才まで中学校に就学させる義務を負う。

憲法や法律でもきちっと決められています。保護者は子ども(憲法では子女)を義務教育学校に通わせなければなりません。

ここで問題になるのが、ここで言う”学校”はあくまで”一条校”であると言うことです。

先程インターナショナルスクールやオルタナティブスクールの多くは「一条校ではない」つまり「法律で認められている学校ではない」という話題を出しました。

では、小中学生の段階でインターナショナルスクールやオルタナティブスクールに通っている子どもたちは「学校に行っていない(義務教育を放棄している)」ということになるのでしょうか。

その通り。一条校に通っていない人は制度上は、「不登校」扱いです(正確に言えば「積極的不登校」と言います。)

義務教育期間中(7歳〜15歳)にありながら一条校に通っていない人は日本の制度上は「義務教育の不履行」つまり「不登校」という扱いなのです。

公立学校では、入学式から全然学校に来ていないのに、名簿上は名前がある人が時々います。一度も学校に来ていないから担任の先生しかこの子の存在は知りません。これは、一条校ではない学校に通っている人の名前が名簿に残っているから起こる現象です。

つまり、一条校でない学校に子供を通わせることは、日本の制度上は

「本来通うべき公立学校を休んで、違う場所で教育を受けさせている」

という状態になるのです。だから公立学校に名前だけは通っていることになって、実際はほかの学校に毎日通っている。つまり、「毎日学校に行っているのに不登校」というなんだか不思議な現象が起きます。

ちなみに公立以外の学校の中でも、”一条校である私立学校”に通わせているとこんな現象は起きません。

もちろん、日本政府もおバカではありませんので、義務教育の放棄(積極的不登校)を選択した家庭への調査はきちんとしています。

  • 保護者への確認(きちんと学校へ通わせているか)
  • 選んだ学校がきちんとした教育をしているのか。
  • 公立学校とのダブルスクール(平日と土日などを使って両方に通うこと)はできないか。

などきちんと調査(場合によっては面接も!)があるようです。

あくまで制度上は、「通うべき公立学校に籍を置きながら、他の学校で教育を受けている」という状態になります。

「不登校状態」なんて言われると、不安になるかもしれませんが心配はいりません。

ほとんどのインターナショナルスクールやオルタナティブスクールは、そのカリキュラムが日本の小中学校に相当するを認められている学校ばかりです。
(そうでなかったら不安で人も集まりません笑)

 

進学の際にやや面倒が起こることを覚悟しよう

ここまででなんとなくわかっていただけると思いますが、

一条校に通わせていないと、「日本の学校を卒業した」という資格が得られません。

公立の義務教育学校(小中学校)ならば問題ないのですが、それ以上(高校、大学)に進学する際には、受験資格の有無をチェックする必要があります。

今は「帰国子女枠」のような名前で、日本の一条校を卒業していなくても一定の学力があると認められれば入学を許可されるケースも非常に増えているようですが、必要であれば大学入学資格検定(いわゆる大検)などを取得する必要があったりするので少し注意が必要です。

オルタナティブスクールの特徴(新教育運動)

やっとテーマに戻ってこられました笑

では、「オルタナティブ教育」とは一体なんなのか。解説します。

オルタナティブスクールの萌芽「新教育運動」

オルタナティブスクールは西洋で始まった「新教育運動」にその原点を持ちます。

簡単に言うと

「今までの教育への反対運動から生まれた教育」
「今までの教育への代替案としての教育」

です。

ここでいう「今までの教育」とは、ずーっと昔に遡って産業革命時代の西洋の教育のことを指します。

産業革命時代の西洋における学校教育では、

  • 全員同じ、画一的教育
  • とにかく知識の詰め込み教育

といったことが重視されていました。

当時は産業革命によって、1人でも多く工場で働く人手が必要な時代です。

人間一人一人の個性に合わせることよりも、最低限の読み書き計算ができて、とにかく歯車のように働ける人を、「効率よく」育てなければならなかった時代です。

「同じことを効率よく」と考えると、座席が一方方向を向いた、一斉授業が最も効率が良いわけで、それがずっと続けられてきました。(日本は今でもこの方法が多いですね。)

それに対して、

「知識詰め込みよりもっと大切なものがあるだろう!」

と、異を唱え立ち上がったのが当時の教育者たちです。

ここに「教育革命」が起こり、さまざまな特徴を持った学校が建設されていき、現在に至ります。

これを「新教育運動」と言います。

これまでの知識詰め込み型教育を”旧式”の教育とみなして”新教育”を謳ったわけです。

日本に現存するオルタナティブスクールのほとんどがこの「新教育運動時代」に新しく作られた学校に原点を持ちます。

この新教育運動が日本に伝わってきたのは明治維新の頃。日本が西洋の文化を取り入れ急速に発展していく中で、同時に取り入れられていきました。

共通点はほとんどない!?

ここまで書いた通り、オルタナティブ教育は

「これまでの教育に対するアンチテーゼ」

として誕生しました。だからこそ、オルタナティブ教育同士ではあまり共通点がありません。各学校ごとに信念を持って多種多様な教育活動が展開されています。

共通点があるとすれば

「これまでの知識偏重型教育に断固反対する」

これだけです。

なぜ今、オルタナティブスクールなのか

日本では現在進行形で知識偏重教育からの脱却が図られています。

  • 大学センター試験改革
  • GIGAスクール構想
  • アクティブラーニングの導入

これらはすべて「知識偏重教育からの脱却」の過程です。世界でも、知識偏重からの脱却の潮流は進んでいます。(むしろ日本よりずっとずっと先に進んでいるのが現状です。)

公立学校ではやっと改革が始まったところですが、

だったら昔から知識偏重教育から脱却しよう!

と取り組んでいるオルタナティブスクールに入れようと考える保護者が多いことは当然と言えば当然ですね。

オルタナティブスクールでは、その源流から考えてもわかる通り、各校によって個性的でさまざまな特徴のある教育活動が展開されています。

「オルタナティブスクールだからいい」ということではなく、とにかく、一校一校よーく吟味して選ぶ必要があります。

オルタナティブスクールのメリットデメリット

 

ここまで書いたことで、なんとなくオルタナティブスクールのメリットデメリットについて理解していただけたかと思いますが。一応まとめておきます。

メリット

① 個に合わせた多様な教育ができる

→「一条校」という縛りがないからこそ多様な活動が展開できます。これまでの知識偏重教育へのアンチテーゼとして子どもの活動や自主性、主体性などを中心に置いている学校が多いです。

② 個に合わせたきめ細やかな指導が受けられる場合が多い

→私立学校ならではといった所です。子供1人に対する教師の数も公立と比べて多い場合が殆どできめ細かく見てくれることが多いです。

③ 公立校では不登校だったり、周りに馴染めない子にとっては希望になりうる

→②とも重なりますが、これまで公立の学校に馴染めなかった人でも自分の個性に合った学校が見つけられるチャンスが広がります。

デメリット

① 卒業資格の問題

オルタナティブスクールは特色ある教育を守るため、日本の学校として認められる、”一条校”ではない場合が多いです。

学校として認められないからこそ、そこに通っている子どもは、学校に行っていない、不登校扱いとなってしまいます。

そのため、一条校に進学する際に、ちょっと面倒が起こります。

ただこれも

  • 事前に公立学校へ転向する
  • 卒業資格認定を取る
  • 帰国子女枠などの入試制度を活用する

などの対策はありますが。普通の人と比べてやや面倒なことになるのは確かです。

② 学費が高い

一条校として認められる学校は、私立学校であっても、児童生徒の人数や規模に応じて「公的資金」による援助を受けています。

多くのオルタナティブスクールはこの支援も受けられないため、他の私立学校と比べても学費が高いことが多いです。

③ 引越し必須?

オルタナティブスクールは当然、数が多くないため、近所に通いたい学校がない場合は引っ越しが必須になります。

また、学校周辺の環境も重視するオルタナティブスクールでは都会や人里を離れて、自然豊かな地方に学校を建てているケースも多く、そのことを考えても、引っ越しはほぼ必須と考えて良さそうです。

まとめ

今回はオルタナティブスクールについて、紹介しました。

その周辺情報についてもたっぷり書きましたのでかなりのボリュームになってしまいましたが、日本の学校制度とその成り立ちについて、理解していただけたかと思います。

この記事を読んで、1人でも多くの子どもが、そして家庭が、自分に合った学校を見つけ、幸せになれることを祈っています。

では!

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